FISMの向こうに見えるもの

応募部門:鑑賞部門
作: (仮称)  Mr.ギミック

定年退職を迎え、退職後はマジックと旅行三昧と決め、早々にマジックキャッスルやFISM、GENIIコンベンションなどを観戦するようになった。

FISM2015RiminiやFISM2018釜山はとても印象深いものであった。しかし、ことコンテストとなると状況が変わってくる。3年に1度の世界大会であるFISM WCMにはコンテスタント枠が150名分ある。このうちの100名がステージやイリュージョンなど、残りの50名がクロースアップやサロンマジックである。

ここで問題となるのはコンテスタントの多さである。もちろん世界中からトップを目指してやってくるのだから人数は多くなる。1人の演技時間は10分以内、例えば入れ替わりの時間が2分とすると、一人頭12分。ここで思いだして頂きたいのがコンテスタントの数である。例えばステージの100名に要する時間は1200分=20時間、クロースアップの50名ではこの半分の10時間、トータル30時間のコンテストである。審査員のご苦労は計り知れないが、観客のご苦労もとても無視できるものではない。結局6日間早朝から深夜までコンテストを見なければならない。人によっては、毎晩行われる有名マジシャンのガラショーと、昼間はレクチャーとショップ巡りに徹してほとんどコンテストを見ない人もいるという。もうステージでメンタリズムが2組続いた時などは最悪である。

 これは本当にマジックを楽しんでいるのだろうか?

 そんな悩みや疑問を持っている中、2016年の年末に私の所属するサークルの会長からメールが届いた。東京都からの強い要請で、オリンピック後の2024年にマジックの世界大会を東京に招致してほしい。ついては専任の相談役になって下さい。と、ここから桁外れの苦労が始まるのであるが、詳細は書ききれないので、要点を列記してみる。

(1)  東京都内でかつ交通の便の良い場所で、2000人規模のホールを6日間から7日間連続で借りることができるのか? 答えは、ほぼ不可能である。費用的にも数千万円かかる。実は、既存のホールというのは季節ごとのリピータや大手のイベンターが優先なのである、新参者のNPO法人の単年度利用には貸してもらえない。狙えるのは、新規に建設されるホールだけである。

(2)  費用がまた膨大である。2000人分のチケット、コンテスタントの出場費用、ディーラーブースの出店費用、東京都からの助成金。計算してもせいぜい1億2000万円。もちろん全席完売しての話である。

では、大会にどのくらいの費用がかかるのか?の皮算用であるが、2018釜山大会の規模の場合、2億5000万円から4億円が必要と推定される。

えー!!全然足りないじゃん!ということでスポンサーの確保に奔走するが、世の中はそれほど甘くはない。

というようなことで、最終的にはFISM2024への立候補は断念することになった。

以上、FISM WCMコンテストのコンテスタントの多さ、そして主催するための巨額な費用。この二つを考える時、FISMって本当に楽しいのかな?という思いが湧いてくる。

いつのまにか人々はFISMを目指すようになっているが、本当にそれで良いのだろうか?マジックキャッスルや、海外のIBMやSAM、GENIIなどのコンベンション、台湾のTMAなどを目指しても良いのではないか。その方が健全なのではないか?コンテストにしても全体のピラミッドが大きすぎるため、世界大会に出場するだけでも大変なのに、そんなにトップマジシャンを絞り込んで良いのだろうか?マジックって競技なの??

 そんなことを考えると、このマジックマーケット は、草の根的でものすごく熱気がある。本来のマジックの楽しさは、こんなところにあるのではないだろうか?皆さんはどう思われますか?